「アクアマリン」宝石の知っておきたい豆知識

《目次》

1．【特徴と性質】アクアマリンとは

2. アクアマリンの歴史

3. 誕生石と石言葉

4. アクアマリンの効果

5. アクアマリンの価値と見分け方

6. アクアマリンのお手入れ方法

7. アクアマリンがおすすめの人

8. まとめ

アクアマリンは透明度の高い水のような色と輝きを持つ宝石で、その美しさから「海の宝石」「人魚の涙」、「夜の女王の宝石」という異名を持ちます。

アクアマリンの基本情報については、以下をご覧ください。

宝石名（英名）	アクアマリン
和名	藍玉、水宝玉
主な構成元素	ベリリウム、アルミニウム、シリコン、酸素
モース硬度	7.5〜8
原産地	ブラジル、ナイジェリア、マダガスカルなど

アクアマリンは、ベリルと呼ばれるベリリウムを含んだ鉱物の一種で、その中でも微量に含まれた鉄によって水色や青色に発色しているものを指します。以前はブラジルで多く採れていましたが、近年ではアフリカ系の産地でも良質な石が採掘されるようになりました。

硬度は宝石としては標準的な硬さなので、お出かけの際に身につけるジュエリーとして気軽に楽しむことができますよ。

ここからは、そんなアクアマリンの特徴や種類を見ていきましょう。

アクアマリンの元となる鉱物ベリル（英名：Beryl）は日本名で「緑柱石」と呼ばれ、その名の通り柱のような結晶がいくつも集まったような姿をしています。和名には「緑」と入っていますが、純粋なものは無色透明です。しかし、結晶の中に含まれる不純物によって、さまざまな色へと変化します。具体的には以下の通りです。

・不純物が少ないベリル：透明（ゴシェナイト）
・鉄分を含んだベリル：青色（アクアマリン）
・鉄やバナジウムを含んだベリル：薄緑色（ミントベリル）
・クロムを含んだベリル：緑色（エメラルド）
・3価鉄イオンを含んだベリル：黄色（ヘリオドール）
・マンガンを含んだベリル：ピンク色（モルガナイト）、赤色（レッドベリル）

上記の中でもアクアマリンは流通量が多いため、お店で見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。

アクアマリンの代表的な産地はブラジルです。かつて、ブラジルのサンタマリア鉱山で採れたアクアマリンは、鮮やかな濃い青が特徴で「サンタマリアアクアマリン」と呼ばれ、希少価値が付き高値で取引されていました。しかし、現在はサンタマリア鉱山が閉山してしまったため、新たに採掘することはできません。

また、19世紀ごろまではロシアからも多く産出していましたが、こちらも近年ではほとんど採れません。

近年ではアフリカの国でも質の良いアクアマリンが産出されており、なかでも1991年から採掘が始まったモザンビークでは鮮やかなアクアマリンが採れます。これは「サンタマリア・アフリカーナ」と呼ばれ、高い品質のアクアマリンとして市場に出回っています。一方で、色味が濃すぎて透明度が低く、グレーのように濁って見えてしまう個体もあります。

「サンタマリアアクアマリン」の他にも、アクアマリンにはいくつかの種類があります。ここでは、その特徴をご紹介します。

・サンタマリアアクアマリン
先述の通り、サンタマリア鉱山で採れたアクアマリンです。現在では別の産地で採れたものも、品質が水準を満たしていればこう呼ばれることもあります。アクアマリンの中でも特に価値が高く、通常よりも深くて濃い青色をしています。

・ミルキーアクアマリン
透明度の低い、乳白色のようなアクアマリンです。比較的安価に流通していますが、優しい印象のミルキーアクアマリンで作られたアクセサリーはどんな服にも合わせやすく、若い方にも人気があります。

・モスアクアマリン
グレーや黒の色味がかかったダークトーンのアクアマリンです。苔のような深い緑のインクルージョンがあるので「モス」の名前を冠しています。深い海を閉じ込めたようなミステリアスな見た目が特徴です。

・アクアマリンキャッツアイ
猫の目のような形の光沢「キャッツアイ」がみられるアクアマリンです。はっきりとしたキャッツアイが出る石は神秘的ですが、貴重なので見つけるのが難しいです。

アクアマリンの歴史は古代ギリシャ時代に遡ります。

ギリシャ神話では、アクアマリンは海の神ポセイドンが海水から作った聖なる石とされています。さらに、海の精セイレーンが持つ宝物としても知られていました。これが浜辺に打ち上げられて人間に見つかったことから、アクアマリンという宝石として人気が出たと言われています。

比較的大きな石が採れやすいアクアマリンは、豪華なジュエリーを作るのに適しており、宝石愛好家のロシア皇帝エカチェリーナ2世や、かの有名なフランス王妃マリー・アントワネットからも愛されました。夜に照明やロウソクの明かりで美しく輝くことから、「夜の女王の宝石」とも呼ばれ、多くの王侯貴族が夜の社交場に身につけて行ったそうですよ。

海の神によって作られたとされるアクアマリンには、海にまつわるい言い伝えが多く残っています。

海の底に住むセイレーンの宝物が荒波で浜辺に打ち上げられてアクアマリンになったという神話から、「沈まない」「浮かび上がる」ものの象徴となり、ヨーロッパでは古くから船乗りや海軍が海難防止のお守りとして身につけていました。また、宝石は富の象徴でもあるため、「豊漁」の縁起物としても愛されました。

さらに、水に関連があるものとして、魚座（3月）の星座石としても知られています。

アクアマリン（Aquqmarine）という名前の語源は、ラテン語です。ラテン語で「水」を意味する「アクア（aqua）」と「海」を意味する「マリン（marine）」を組み合わせて名付けられました。2つの言葉を合わせると「海の水」。海に投げ入れると水に溶けて消えてなくなってしまうようだと言われるくらいに透き通った青色を持つ宝石にはぴったりの名前ですね。

誕生石は、1912年にアメリカの宝石商組合（ジュエラーズ・オブ・アメリカ）によって選ばれ、広められました。日本では、ジュエラーズ・オブ・アメリカによって定められたものに少し手を加え、1958年に全国宝石卸商協同組合が発表したものが有名です。国内では他の団体も独自に誕生石を選定しており消費者に混乱を招いたため、2021年に業界が一丸となって誕生石の統一を試みました。

一方で、石言葉は誰かが明確に定めたものではありませんが、宝石のキャッチフレーズのようなもので、石を選ぶ際に役立つためご紹介します。

アクアマリンは3月の代表的な誕生石です。春の訪れを予感させる、爽やかな季節にぴったりの宝石ですね。

季節の変わり目で天候が不安定な3月は、春一番や春の嵐と言われるように風が強く、海が荒れることもしばしばあります。そこで、航海のお守りであるアクアマリンが誕生石に選ばれました。また、3月の星座が魚座なことも関係していると言われています。

3月の誕生石は、他にもサンゴやブラッドストーン、アイオライトがあります。

アクアマリンの石言葉は、「幸福」「富」「聡明」「勇敢」などが有名です。

アクアマリンは海を想起させる宝石でした。そのため、豊穣な海のように、持ち主に豊かさを与えてくれるとされており、富の象徴にもなっています。また、海が満ちるように幸福に満ちるとも言われています。
前向きな石言葉が多いので、新たな門出へと向かっていく3月という季節にぴったりですね。

アクアマリンは、パワーストーンとしても多くの人に身につけられています。ポジティブイメージを持つアクアマリンを身につけると、どのような効果があるのでしょうか。ここでは、パワーストーンとしてのアクアマリンの効果をご紹介します。

・心を洗い流し、ネガティブな感情を取り除く
・穏やかで落ち着いた気持ちでいられる
・心身ともにリラックスし、安らぎと癒しをもたらす
・自分や他人を愛し、良好な人間関係を築くことができる
・若さを保つことができる
・芸術的感性が豊かになり、クリエイティビティが高まる
・海難事故や航海（旅）の無事

海のイメージから、穏やかさや豊かさにまつわる効果が多いですね。また、水で洗い流すように穢れを祓い、心を清めてくれるとされています。

さらに、良好な人間関係や家庭円満のイメージもあることから、「幸せな結婚」を象徴する石でもあります。結婚4年目の花婚式では、記念石としてアクアマリンが設定されています。結婚記念日や出産のお祝いには、アクアマリンを贈ると喜ばれるかもしれません。

ここからは、アクアマリンの価値や評価基準についてご紹介していきます。これからアクアマリンを購入しようと考えている人や売却を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

アクアマリンの魅力は、なんといってもその透明感です。アクアマリンは、ベリルの中でも、クラック（ひび）やインクルージョン（内包物）の少ない綺麗な結晶が産出されるため、市場に流出しているアクアマリンは透明度の高いものが多いですが、その中でもより不純物の少ないものが美しいとされ、高値で取引されます。

また、色味は濃いものの方が価値は高いとされていますが、あまりにも濃すぎて透明感が失われてしまっている石は評価が下がります。現在、販売されているアクアマリンの多くは、色味を調整して美しい青色を出すために加熱処理が施されています。しかし、これが自然に加熱されたものなのか人工的な加熱処理なのかを判断することは非常に難しいです。

アクアマリンの評価基準は以下のとおりです。

・カラー
・クラリティ（透明度）
・カット
・カラット（大きさ）
・産出国

アクアマリンでもっとも重要視されるのは、色の美しさです。もちろん、カラット数が高くて気泡やクラック、インクルージョンが少ないものほど評価は高くなります。また、アクアマリンは大きな結晶が採れやすいことで知られており、100kgを超えるものが発掘されたという記録も残っています。しかし、ある程度大きめのアクアマリンの方が彩度の高い個体を見つけやすいと言われています。

ここでは、アクアマリンの主な評価基準である色と透明度について解説していきます。

・評価基準①色
アクアマリンで最も評価が高いのは、紺色に近い鮮やかな青色が特徴的な「サンタマリアアクアマリン」です。アクアマリンの中には、青というより緑がかったものもありますが、市場ではより純粋な青に近い色が人気です。色が暗すぎると透明感が失われてしまいますが、明るすぎても青が鮮やかに発色しないので、中間くらいの明るさが最も好ましいとされています。また、産地によっても色が異なるため、産地も評価基準に含まれます。

・評価基準②クラリティ
インクルージョンが多すぎると、石に濁りがでてきてしまい、透明感が損なわれてしまいます。そのため、一般的には透明度が売りのアクアマリンには肉眼では見えないほどの小さなインクルージョンしかみられず、透明度の低いものはビーズやカボションに加工されることが多いです。

しかし、インクルージョンの種類によっては価値が上がることもあります。その代表例は、キャッツアイのように光るチューブ状のインクルージョンや、光の反射でキラキラ光っているように見える「アベンチュレッセンス」という光学効果をもたらすインクルージョンなどです。こうした石を美しく見せる効果を持ったインクルージョンがみられるアクアマリンは、高い値段がつくこともあります。

人気のあるアクアマリンですが、偽物も出回っているため購入の際は注意しましょう。

アクアマリンの偽物としてよく流出しているのはガラスや合成スピネルです。インクルージョンが全くない綺麗な石が安価で売られていたり、触ってもひんやりしなかったりする場合は、偽物の可能性があります。

せっかく石を購入したのに残念な気持ちになってしまわないためにも、鑑定書付きの本物を取り扱っている、信頼できるお店で購入しましょう。

アクアマリンのモース硬度は7.5～8と、宝石としては十分な硬さがあります。傷にも強いため、取り扱う際にはあまり神経質にならなくても問題ありません。

しかし、強い衝撃や温度変化によってヒビが入ってしまう危険性もあるので、注意しましょう。また、硬度が低いジュエリーと一緒に保管しておくと、そのジュエリーを傷つけてしまう恐れがあります。心配な方は、他のジュエリーとは分けて保管するようにしましょう。

さらに、アクアマリンは直射日光に弱い性質があります。太陽の光に長時間当てていると、アクアマリンに含まれた鉄と紫外線が化学反応を起こし、褪色してしまいます。日中に身につけて長時間お出かけするのは控えましょう。汗によっても変色してしまうこともあるため、帰宅後は柔らかい布で拭き取るなど、こまめなケアによって美しさをキープすることができます。

アクアマリンは、こんな人におすすめです。

・3月生まれの人
・気軽に付けられるジュエリーが欲しい人
・子供の頃にプリンセスが好きだった人
・海やマリンスポーツが好きな人
・心穏やかに過ごしたい人
・豊かな人生を過ごしたい人
・幸せな結婚をしたい、良い人に巡り会いたい人
・家族みんなで仲良く過ごしたい人
・勇気を持って新生活をスタートさせたい人

アクアマリンは、パワーストーンとしてもさまざまな効果が期待されています。石言葉や効果を見て、ピンと来た人はぜひ身につけてみてください。もちろん、ジュエリーとしてもとても魅力的なので、かつてプリンセスに憧れていたことがあるという方は、大きめのアクアマリンが施されたアクセサリーを身につけることで、子供の頃のときめきを思い出せるかもしれません。

透き通った青色を持つアクアマリンは、古代から多くの王侯貴族に愛されてきました。高度があり丈夫なので、宝石の扱いに慣れていない方でも、アクセサリーとして気軽に取り入れることができます。

海のように美しいアクアマリンは、海にまつわる神話や言い伝えなどが残されており、その一粒の中には壮大な歴史とロマンが詰まっています。色味や形もそれぞれ異なるので、ご自身の好みに合ったアクアマリンを探してみてください。

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